「毎日ラーメン健康生活」という、ある意味“矛盾した生き様”を貫く男をご存じだろうか?
彼の名は SUSURU(すする)。ラーメンを毎日すすり、その姿をYouTubeにアップし続けて8年以上。日本全国のラーメンファンはもちろん、海外のラーメン通からも支持を集め、チャンネル登録者数は170万人を突破。しかもただの“食レポ系YouTuber”では終わらない。イベントを主催すれば地域経済に数億円規模の影響を与え、冷凍ラーメンの自販機までプロデュース。まさに「ラーメンを軸に世界を動かす男」である。
今回は、そんなSUSURUさんの幼少期から現在までを、ブロガーらしい筆致でゆるっと、でもディープに掘り下げていく。「どこかでラーメンをすする彼」の姿に、あなたはきっと夢中になる。
第1章|青森・弘前で育った少年、SUSURUの原点
SUSURUさんは1993年1月12日、青森県弘前市に生まれた。津軽弁が飛び交い、冬は深い雪に閉ざされる東北の街。ラーメンが“生活の一部”として根づくこの地域で、彼の舌は育てられた。
地元で親しまれるのは「煮干し系ラーメン」や「津軽ラーメン」。どこか素朴で、どこか深い。寒さの中、湯気とともに立ちのぼる煮干しの香りに包まれながら、子どものSUSURU少年は丼を抱えていた──そんな光景が目に浮かぶ。
彼は県内屈指の進学校である青森県立弘前高等学校に進学。そこで本格的に打ち込んだのが「バンド活動」だった。担当はドラム。SUSURUさんの動画でもわかるように、彼のリズム感は抜群。今もたまにライブやスタジオセッションの様子がSNSにアップされるほどの腕前だ。
ただ、この頃の彼はまだ「ラーメンで食っていく」などとは夢にも思っていなかった。
第2章|明治大学で出会った“人生の転機”
高校卒業後、SUSURUさんは明治大学経営学部に進学。上京してからはバンド活動により一層没頭し、「音楽で食べていく」という夢を抱いていた。
ところが大学生活の途中、バンドは方向性の違いで解散。大きな喪失感を抱える中で彼が下した決断は──「大学を辞める」というものだった。
音楽も失い、学歴も手放した。社会的な意味では“宙ぶらりん”の状態。しかしこの決断が、皮肉にもSUSURUさんの本当の人生を動かし始める。
第3章|「ラーメンをすすれ」…人生を変えたたった一言
大学を辞め、無職になったSUSURUさん。実家からの仕送りも絶たれ、金もなければ夢もない…という状況の中、彼を救ったのが“チャル蔵”という人物だ。現在のSUSURU TVのプロデューサーであり、大学時代の先輩である。
チャル蔵さんは、ある日こう言った。
「お前、ラーメン好きだろ?YouTubeで毎日すすってみろよ。たぶん、ウケるぞ」
この軽いノリの一言が、まさに運命の分岐点だった。2015年11月6日、記念すべき第1本目の動画がYouTubeにアップされる。「SUSURU TV.」の誕生だ。
第4章|毎日投稿は地獄?それとも修行?SUSURUの執念
「毎日ラーメンを食べて、それを動画にして出す」。言葉で書けば簡単に見えるが、これは並の精神力では絶対に続けられない。
ラーメンを食べる→撮影→編集→投稿。この一連の流れを、土日祝日問わず毎日。しかも、1日も休まず8年以上。狂気とも呼べる習慣だ。
しかも、彼の編集は手抜きではない。映像のテンポ、BGM、字幕の出し方、さらにはラーメンの“すする音”に至るまで、五感を刺激する巧妙な編集が施されている。
どこか懐かしいゲーム音楽やアニメBGMを巧みに織り交ぜながら、見ているだけでラーメンの香りが漂ってきそうな動画──それがSUSURU TVだ。
第5章|2021年、結婚。ラーメンで繋がった人生の伴侶
2021年4月、SUSURUさんは一般女性と結婚した。
奥様との馴れ初めは、もちろん“ラーメン”。あるラーメンイベントで知り合い、意気投合したという。結婚式を終えた直後、まだタキシードとドレスのままラーメン屋へ行ったというエピソードもあり、まさに「ラーメンに始まり、ラーメンに続く夫婦生活」である。
ちなみに奥様は、SUSURUさんのチャンネル内で「嫁すする」として登場することも。顔出しはしていないが、時折聞こえるツッコミや笑い声に、視聴者は癒やされている。
第6章|富山・名古屋で数万人を動員!ラーメンフェスの快挙
YouTubeの枠を飛び越え、リアルイベントでも大成功を収めているSUSURUさん。
【2023年・富山ラーメンフェス】
- 来場者:約45,000人(3日間)
- 経済効果:約9.3億円
- 全国から名だたるラーメン店が集結
- 会場は超満員。行列の嵐!
【2024年・名古屋ラーメンフェス】
- 来場者:約80,000人(5日間)
- 経済効果:約16億円(!)
- 名古屋市と連携した“街ぐるみ”の一大イベントへと発展
彼の影響力が、もはや「YouTube発」ではなく「食文化の旗手」レベルに昇華しているのがわかる。
第7章|冷凍ラーメン自販機で“ラーメンの未来”を創る
2021年、SUSURUさんは「SUSURUラーメンセレクション」という冷凍ラーメン自販機をプロデュース。
- 全国5か所に設置
- SUSURUさんが選んだラーメン店の味を再現
- 24時間いつでも、非対面で購入可能
- クオリティが非常に高く、リピーター続出
コロナ禍で店に行けない時期、これが“救世主”になった人も多かったという。
第8章|「批判しない」レビューで信頼される理由
SUSURUさんの動画には、ひとつの哲学がある。それが「否定をしないこと」。
どんなラーメンにも敬意を払い、店主の想いを汲む。だから、ネガティブなコメントは一切しない。美味しさに少し疑問が残る場合も、「大変すすれました」と締める。これが彼流の“やさしさ”だ。
この姿勢が店主からの信頼を集め、「ぜひうちにも来てほしい」という依頼が後を絶たない。
第9章|SUSURUの夢──「ラーメンを文化にする」
彼の最終的な目標は、ラーメンを「世界に誇る日本文化」にすること。
すでに台湾やアメリカなど、海外でもラーメン人気は加速中。今後は海外進出も視野に入れているという。動画にも英語字幕をつけるなど、グローバル展開への準備も着々と進んでいる。
まとめ
SUSURUさんの人生は、ラーメンそのものだ。熱く、濃く、時にあっさり。そして、人の心を満たしてくれる。
湯気の向こうにある人情、麺の伸びに滲む土地の風土、スープに宿る職人の矜持──それを一杯ずつ、今日もすすり続けている。
もしかしたら、彼がすすっているのはラーメンじゃないのかもしれない。
それは人生であり、文化であり、未来なのだ。


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